イモムシのぼうけん1

 わたしのポテトちゃん(イモムシ)が脱走した。

 ベランダの鉢植えのレモンの木で見守っていたのだけれど、スズメがやってきたり、台風がやってきたりで落ち着かない。いよいよ部屋に鉢を入れることにした。それが三日前のこと。

 部屋の中に招き入れるとますます愛着がわいてくるもので、しょっちゅう様子を見に近づいてしまう。目はつぶつぶしているんだなあとか、あたまのすぐ下に短い脚が6本ちゃんとあるんだなあとか、イモ初心者のわたしには目新しいことばかり。

 脚があるなら、あのいかにもキャタピラーなもぞもぞ動く部分はいったい何なんだと調べてみると、イボ状のでっぱり(!)とあった。そのイボ状のでっぱり(腹脚というらしい)がまた、たまらなく素敵だ。まるでタコの吸盤のようでいい。歩くときも可愛いし、細い枝につかまるすがたもきゅんとする。アングルによってはセクシーですらある。

 レモンの葉は、あっという間に一枚残らず食べつくされてしまった。イモムシの姿がないのでさがすと、わたしがなぜかレモンの根元に植えてしまったネギにくっついていた。ごめんよ、えさをさがしていたんだね。わたしはベランダからシークヮーサーの鉢も運び入れて、ネギからイモムシを移動させた。同じミカン科だから食べるだろうと思ったのだ。

 夕方、様子を見にいくと、またしても姿がない。シークヮーサーの葉を食べた痕跡もない。気に入らなかった? そして、どこへいった? 木から離れると思わなかったので、油断した。

 焦ってはいなかった。これまでバッタ、キリギリス、ナナフシ、カマキリを飼ってきたが、みんなそれぞれに脱走をした。彼らが向かいがちなのは、光や風を感じるのだろうか、やっぱり窓際。そして、上へ上へとのぼっていく習性がある。その日のうちに見つからなくても、翌日の朝に網戸にくっついている、ということも多かった。しかし、イモムシの脱走ははじめてである。行動が読めない。わたしは万が一にもイモムシをふんづけないように気を付けながら、捜索をはじめた。

つづく

色っぽ~。

kiinote

児童文学作家、イラストレーター北川佳奈の雑記帳

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